足利市通二丁目の足利市立美術館で企画展「橋口五葉のデザイン世界ー装幀・ポスター・新板画 グラフィックデザインの魁(さきがけ)ー」が始まった。五葉が手掛けた夏目漱石「吾輩ハ猫デアル」をはじめ、三越呉服店をはじめとする商業グラフィックや新板画などの作品や資料、200点以上が展示され、五葉の豊かなデザインの世界を紹介している。
橋口五葉(1881―1921)は鹿児島県生まれ。幼いころから日本画を学び、1899年に上京し、1901年に東京美術学校(現東京藝術大学)に入学。在学中に兄の紹介で夏目漱石と出会い、漱石の小説家デビュー作である「吾輩ハ猫デアル」の装幀を手掛け、一躍注目を浴びた。その後も漱石の作品はもとより、泉鏡花をはじめ日本近代文学を代表する作家の装幀を手掛けた。
また五葉はグラフィックデザイナーとしても豊かな才能を示し、同呉服店や日本郵船などのポスターやチラシ広告も手掛け、人気を集めた。さらに16年には江戸からの伝統的な浮世絵版画の技法により新板画の創造を目指す版元の誘いを受け「浴場の女」を刊行。以後、41歳の若さで亡くなるまで伝統技術とオリジナルが共存する作品を生み出した。
五葉の装幀の特徴のひとつに「本棚に並べた状態で美しく見える」ことがあるということで企画展では様々な角度からその装幀が見られる工夫が施されている。また同展ではこれらポスターを来館者が撮影できるスポットも設けている。
同展は5月18日まで。休館日は月曜日(5月5日のぞく)と4月30日、5月7日。開館時間は午前10時から午後6時。入館料は一般1000円、大学・高校生700円、中学生以下無料。各種障がい者手帳を持つ人とその介護者1人・両毛広域圏在住の65歳以上は無料。
会期中4月20日午後2時から学芸員による鑑賞ワークショップ、同26日と5月11日午後2時から学芸員によるギャラリートークが行われる。問い合わせは同館へ。
