ヘルマンハープ『アルファリーリエ』 主宰 中村 加奈子 さん
ヘルマンハープ演奏グループ『アルファリーリエ』はこのほど、EXPO 2025 大阪・関西万博ヘルマンハープコンサート(4月27日)に出演が決まった。その代表を務める中村加奈子さんと4名の出演者に、ヘルマンハープの魅力と、同万博出演に向けた意気込みを聞いた。

ヘルマンハープは1987年、ドイツの農場主ヘルマン・フェー氏が、ダウン症の息子も弾けるようにと10年の歳月をかけ作り上げた弦楽器である。日本での歴史はまだ浅く、2003年に当時ウィーン在住の梶原千沙都氏によって、障がい者も健常者も楽しめるバリアフリー楽器として導入された。
使用される楽譜が実に特徴的で、一枚で一曲が完成する。楽器が誕生する以前に楽譜が製作され、それに合わせて楽器が完成したとのこと。楽譜を弦とハープの表板の間に差し込み、音符と重なった弦を上から順番に、指先の腹で弾き音を響かせる。シンプルな手順で誰でも演奏が可能。
中村さんとヘルマンハープの出会いは、2012年青山のショールームを偶然訪れた時のこと。「心にしみる優しい音色と、誰でも簡単に弾ける親しみやすさにハープの虜になり、すぐに銀座にあるハープ教室を教えていただき通い始めました。翌年にはインストラクターの資格を取り、足利市で教室を発足し、形を変えながら今に至っています。」

さらに、EXPO 2025 大阪・関西万博ヘルマンハープコンサート出演となった経緯を伺うと「現在集まっているメンバーは、日本ヘルマンハープ振興会にハーピスト会員として所属しています。本部から万博出演のオーディションがあると連絡が入り、悩んだ末シニアの私たちが万博で演奏することは、今回が最初で最後だろうと思い、メンバーのうち5人(中村加奈子さん、青木依久子さん、笠原洋子さん、田部井晶子さん、中島明美さん)がそれぞれに挑戦することになりました。オーディションはリモート形式で、慣れない機材操作の中、演奏を頑張り見事に全員合格を果たしました。本番は第1部で障がいのある方々が演奏し、第2部が私たちシニアの演奏となります。第3部ではフィナーレに『会えるその時まで』というドイツで昔から親しまれている曲に、同協会の理事長である梶原氏が作詞をし、演奏と歌を披露します。」本番を前に周囲の応援の声を受け、心から演奏を楽しんでいる5人の姿があった。

皆さんにヘルマンハープの魅力を伺うと「心のよりどころになる癒しの楽器」「音色の優しさと楽譜一枚で曲が完成する手軽さ」「演奏を聴いている人だけでなく、奏でている本人をも癒してくれる」「小さな音量で夜演奏することもでき、さらに小さな孫とも一緒に楽しめる」と思いを語ってくれた。
楽器としては小ぶりで、病院など様々な施設に持ち込みができ、傍でそっと寄り添うように音楽を奏でることもできる。「障がいを持った方や年配の方も、ハープを知ることでその人の世界観が変わることもあります。これからも人の心に寄り添いながら、社会貢献につながる演奏活動ができればと考えています。」各種施設からの演奏依頼も増え、アルファリーリエと共に中村さんの活動がバリアフリーに広がる。

文:松尾幸子
写真:浦島大介