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テーブルの向こう側。『テーブル上の季節』筆者  塩見 奈々江 さん

2025 7/02
特集
2025年7月3日

 渡良瀬通信 2019年4月号から連載がスタートした『テーブル上の季節』は、minimu 7月号で76回を迎えた。その筆者である塩見奈々江さんについては、これまで連載ページに短く紹介しているのみだった。ちょっぴり謎な塩見さんの世界。連載が最終回となる今号では、ご本人にこれまでの生活を綴ってもらった。

 平成から令和に変わった月から「テーブル上の季節」の連載を始め、6年という月日が経っていたことに一番驚いているのは私自身かもしれない。よくまあ、毎月毎月食べ物のことばかり書き続けてきたな、と笑ってしまうが、私にとって食は暮らしの中で特に重点を置いているところ。内容は溢れるように沸いてきた。当時の編集長だった野村幸男さんから「とにかく楽しく書いて欲しい」とおっしゃっていただき、ありがたくその通りに続けたら、あっという間だった。

 東京に生まれ、幼児期をイタリア、イギリスで過ごし、その後横浜の学校に通い、18歳から10年間イタリアのフィレンツェで過ごした。日本に戻り、東京から100キロ圏内で田舎の暮らしができる場所を探し、足利の名草に明治時代の家を見つけたのが11年前。恥ずかしながら、それまで私は足利という市すら知らなかったが、宇都宮の不動産屋に今の家を紹介され、名草という地域が気に入り、そのまま移り住んだ。家探しにあたっては山を背負い、近くに川が流れ、昔から人が住んできたところ、が条件だった。

 私が生まれ日本で過ごしてきたのは東京の恵比寿。山手線、地下鉄の駅から近く、駅ビルやガーデンプレイス、飲食店が立ち並ぶ便利がぎゅっと詰まったところ。そこでの暮らしはもちろん楽しいが、人間は無いものねだりで田舎暮らしをしてみたかった。それはいつも車で走りまわり見聞きしてきたイギリスやイタリアの田舎暮らし。どこまでも続く畑、街道筋の古い村、点在するお屋敷。自然に囲まれ、築数百年の家を直しながら住み、畑で野菜を育て動物を飼う。そんな田舎でふれ合ってきた風景や人々は素晴らしく、独特な時空間が流れていた。家に友達を呼び、テーブルを囲みご飯を食べながらおしゃべりを何時間もする。夏なら麻のシャツやワンピース、パナマ帽を被り、冬はオイルジャケットを纏い、ときには穴を塞いだ跡のある手編みのウールやカシミアのセーターなどを着ていて、静かな暮らしの中にも華があった。名草での私の暮らしは理想とは程遠いときもあるが、折々にその原点を思い出し、微調整を繰り返してきた。便利は必ずしも贅沢ではないこと、高くても長く使えるもの選ぶこと、古いものを大切にすること。この辺りの考えは揺らぐことはなかった。

 私は今、名草で古い木造の家屋を直しながら暮らしているが、全く完成が見えないのも楽しい。なるべく新建材は使わず、木、紙、ガラス、陶器、石、鉄、真鍮、銅など昔から使われてきた素材を活かして直している。畳の部屋などはそのまま残しつつ、水回りや冷暖房などの家電は新しいものを揃えた。誰かが「家のリフォームは大人の恐ろしいおもちゃ」と呟いていたが、まさにそんな感じである。

 足利に来てから沢山の方と巡り会うことができたのは自分の宝だと思う。私の周りにいる方々の仕事は様々だが、どこかで興味が重なる点がある。例えば来週は羊の毛刈りがしたいという友達二人とお隣佐野市に羊を見に行く。(残念ながら今年の毛刈りは終了してしまったので、羊見学のみ)そして類は友を呼ぶのか、食いしん坊で料理好きが多い。そういう人達がいるからこそ、私は忙しくも楽しく名草で生活ができている。

昨年やっとリフォームした浴室。タイルを張り替え、ホーロー製のバスタブ、陶器製のシンクに付け替えた。洋式なので、洗い場はない。
この家に引っ越してすぐにやってきた鉄の薪ストーブは家に入れるのに7人の力が必要なくらい重かった。冬は料理にも使う。
畳の部屋は日本や韓国の古い家具を置いて、そのまま活かした。

 そしてもう一つ足利に来て出会ったのが、地唄舞。私は若い頃日本舞踊を習っていたが、ある日また教わりたくなり、野村さんに今の先生を紹介していただいた。座敷で舞われるゆったりと静かな動きが特徴的な地唄舞。近代では日本伝統芸能を身近に感じることは薄れてしまったが、せっかくこの国に生まれたのなら、ぜひ一度は触れて欲しい文化。週に一回着物を着て出かけるお稽古は私の生活の基盤となっている。

 今になって思うと、深く考えもせず本当にひょんなことから足利に移ってきたものだ。そこから築いてきた暮らし、大切な人達との関係はかけがえのないもの。そして新たに始めてみたいことも沢山ある。それらはまたどこかでお伝えできるといいな、と思っている。

 最後に、連載開始から担当していただきお世話になった、現編集長、松尾幸子さんにお礼を申し上げます。毎月とても楽しく書かせていただきました。

地唄舞 体験塾

2025年7月21日(月・祝)
16:30 ~18:30(開場16:00)
会 場/料亭 相洲楼
    足利市通5丁目3208
参加費/一般2,000円 学生1,500円
予 約/(e-mail) info@bagatto.jp
講 師/堀派神崎流家元 神崎貴加江
企 画/塩見奈々江(神崎貴加哉)、宮本あかり

地唄舞を体験してみたいという方へ、一日体験塾を開催します。参加には右記のメールアドレスに申し込みが必要です。
扇の持ち方、歩き方などの基礎、そして「浮舟」という曲を指導いたします。全く経験のない方、大歓迎です。

浴衣でのお稽古になります。会場での着替えもできます。浴衣の貸し出し、着付けもいたしますので、事前にお問い合わせください。

特集
テーブル上の季節 塩見奈々江 栃木県 足利市
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  • 5年間の取り組み成果を展示・名草の小さな未来図展
  • 「100年先を見据えた持続可能な学び舎の構築へ」 若きリーダーが描く、少子化時代の学校経営戦略 桐丘学園理事長・関﨑亮氏に聞く

この記事を書いた人

松尾幸子のアバター 松尾幸子 minimu 編集人・ライター

タウン情報誌の編集を経て、minimu 創刊号(2024年1月号)より、フリーの編集人・ライターとして活動中。地域の皆さんに良質で明るい情報を届けるべく、編集・取材を続けています。
逆境には強いが涙腺は弱い。スポーツジムが憩いの場です。
皆さんからの情報をお持ちしております。

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