渡良瀬川流域の生活者を結びつけ、つながり合い新しいものを発信する
2024年12月1日オープンした『わたらせリバープラザ』(足利市栄町2丁目101)。足利市では「本町緑地公園施設整備事業」により河川敷は多くの人の利用が可能となった。しかしさらに市民や観光客、サイクリストがゆとりを持って滞在できる施設の不足を解消するため、水辺の利活用による地域の活性化を推進する国の支援制度である「かわまちづくり支援事業制度」を用い、施設の整備には、公募設置管理制度(Park-PFI)を採用し、同施設が開業することとなった。市の公募により、地元企業である(関綜エンジニアリング株式会社、大協建設株式会社)による法人グループが応募し選定された。
代表法人である関綜エンジニアリング(株)に2024年春就職した、大森智史さんと内村仁泉さん。彼らは出身校である足利デザイン・ビューティ専門学校の卒業制作展で作品『Watarase river project』を出品し『足利市長賞』受賞している。学生時代より『わたらせリバープラザ』に関わってきた二人にその取り組みについて話を聞いた。
自分たちが思い描いていたものが形になる喜びは大きい
完成前の『わたらせリバープラザ』の情報は、足利市のホームページやSNSなどで公開されてはいたが、詳細を知る市民は多くはなかった。完成と共に注目される存在となっている同施設。この取り組みに学生時代より関わりのあった二人に感想を尋ねると。
「学生の頃は課題としての卒業制作でしたが、社会人となってからは学生より一段上の大きな責任がのしかかってくる中の建物の完成でした。その分学生の頃にはない達成感も感じています。」と大森さん。「学生時代は自分のつくりたいデザインが優先していましたが、社会に出てからは、基準となるものが変化したことを実感しています。例えば予算の関係や業者間のスケジュールなどが学びとしてありました。とは言え完成した建物を見ると率直に嬉しいですね。」とは内村さん。
同プラザとの関わりのスタートは
同プラザの取り組みに関わるきっかけは、関綜エンジニアリングの高橋社長と学生時代の二人の恩師が知人であったことによるもの。二人の当時の専攻はクリエイティブデザイン科で、インテリアデザインを主に学んでいたという。
まずはどのような形で参加したのか。「話をいただいたときには大まかなコンセプトは既に決まっており、自分たちはそれに沿う形で先生とも相談しながら内装のアイデアを出していきました。」「はじめはどこまで考えればいいのかと、戸惑いもありました。学生でありながらいきなり、社会人の方との打ち合わせも難しさを感じていました。」と内村さん。一方大森さんは「学生の頃は自分のデザインを突き詰めていきましたが、実際に利用される建物となると、お客様のニーズに合わせるなどその辺りが大変でした。」と苦労した思いも。
同プラザの仕事を通して一番の収穫は
わたらせリバープラザのコンセプトは〈渡良瀬川の流域で生活する私たちを結びつける拠点としての役割と、様々な人と人とがつながり合って新しいものを発信していく、足利の魅力あふれる観光拠点としての役割を担う〉(同HPより)である。「多くの人が集える場所で、子どもたちの職業体験スペースがあることを知り、収納や持ち運びが安全であることなどを踏まえ、天板が台形のテーブルのデザインを提案しました。」と内村さん。「危険が無いようにエッジを取ったり、工夫を重ねデザインの多様性を突き詰めました。このデザインを採用してもらえたのは、自分たちにとっても大きな収穫でした。嬉しかったです。」大森さんも頷く。
他にも、OAフロアーとしてOA機器の配線が床の上に広がることを極力避けるよう、フロアーマットの下にコードをコンパクトに収める工夫などがある。小さな子どもたちも利用することを考え『安全』な空間をつくることを心がけたとのこと。「弊社のモットーにも『安全第一』があるのでそこにも繋がります。」
学生時代の勉強で社会に出て役にたったことといえば
「デザイン以外では接客などのマナーの資格・検定の勉強が今とても活きています。」と大森さん。「私はCADの勉強ですね。様々なCADに触れることになった今とても役に立っています。」と内村さん。「様々ある中で、一番といえば同プラザに携わった経験です。就職してからも自分がデザインしたものが実際に使われていく過程を見ることができた、そのことが大きかったです。」と大森さん。
就職について、同社を選んだきっかけは
「学生時代、同プラザのプレゼンテーションのために、2回ほど同社を訪れています。そのとき働いている人の様子を見ることができ、社内の雰囲気の良さが伝わってきました。」「伺ったときに社員の方々が生き生きと働いている姿が印象的でした。」と二人。
同プラザのピーアールを
「この素晴らしいロケーションで大自然を眺めながらのハンバーガーは最高ですよ。職業体験もeスポーツも楽しんでください。若者たちには特に利用してほしいですね。学校帰りでもいいですし。」と大森さん。
「子どもたちが職業体験を専門にできる施設は、近隣ではそれほどありません。体験を沢山してビジョンややりたいことを増やして欲しいですね。そしてコミュニケーションの場としておおいに利用してほしいです。」と内村さん。
同プラザと同様に、進化を止めない二人の活躍に期待したい。
取材・文/松尾幸子 写真/浦島大介
協力/わたらせリバープラザ
関綜エンジニアリング株式会社
足利デザイン・ビューティ専門学校