足利市川崎町の薬師寺に安置される栃木県指定有形文化財「木造薬師如来坐像」の修繕作業が開始された。平安後期から鎌倉前期の作とされる同坐像を後世まで守り伝えていくことが目的。6月17日には修繕のための搬出が行われた。修繕により、具体的な制作年や作者が分かる可能性もあり、今後の進行状況が注目される。修繕期間はおよそ10カ月で来年4月に開眼法要を行う予定。
1190年の同寺。当時、同地域を治めていた小野寺氏が創建した真言宗の寺院で、同坐像は開山当初の本尊とされている。1983年に有形文化財(彫刻)として県指定された。座高は49㌢、肩幅24㌢。表情などに平安末期から鎌倉前期作の特徴があるという。江戸時代に台座、光背などが作られ、あわせて修繕、彩色などが施され、現在に至っているという。
彩色の剥がれや左手の一部欠損など経年劣化が見られることから3年ほど前に、東京国立博物館で調査を行ったところ、1000年以上前のヒノキ材で作られていることや内部にも傷みがあることが分かり、今回修繕実施を決断した。
修繕にあたっての費用は県、足利市民文化財団の補助を受けるほか、「お薬師さん修繕プロジェクト」と銘打ったクラウドファンディングを実施。約3カ月間で全国から約103万円の寄付があった。
17日の搬出では、市文化財専門委員で文星芸術大教授の大澤慶子さんと同寺・石川将隆住職(48)の立ち合いのもと、修繕を担当する東京の明古堂・明珍素也代表(56)がCT調査の画像を見ながら、どのように修繕していくか最終確認。
欠損部分や内部の補修、江戸時代の彩色の除去などを行いながら、修繕はできるたけ制作された当時の姿にすることなどを確認。修繕にあたっては坐像の底板を外すことから、制作年や作者名が記されている可能性はゼロではないという。
石川住職は「クラウドファンディングのアドバイスをはじめさまざまな方の協力をいただいた」とし、「全国から寄付をいただき、日本の古い文化を守っていきたいと思っている方がたくさんいらっしゃることが分かり、本当にありがたいです」と話していた。
