パワーシティポップパンク

『Power Pop Testament』
(Vox Populi–Plastic Records)
バンド名からして直球パンクではないのは承知していた。王道から逸脱しながらも片足だけは乗っかっている。フィンランドが生地であることにも因果関係はあるのだろうが、そのPLASTIC TONES(ここではプラトーンズと呼んでおく)がこの3月、足利のZOWA ZOWAに降臨したのは事実であり、ちょっとした事件といっていい。
都内をはじめ全国のショップがイチ押していた1stアルバム『Power Pop Testament』(2022年)から気には留めていたが、新作『Can You Keep A Secret ?』を引っさげての再来日となるスケジュールに目を走らせるなり、足利の二文字が飛び込んできたのだから身体がのけ反った。
BAD ANXIETY、BOOTCAMP、JUDY AND THE JERKS、SEUDO YOUTHなど、クセのあるバンドからツアー先のひとつに指名されてきたZOWA ZOWAだが、プラトーンズは毛並みがちがう。アルバム名にも躍るパワーポップをベースに、シティポップからの影響も……という聞き捨てならない触れ込みまであるのだから。ツアーを監修し、彼らの国内盤もリリースするVOX POPULIの主張だが、これについては慎重にあつかいたい。双方の共通言語に“ポップ”があるとはいえ、パワーポップのそれはバブルガムなどの系譜にあるもの。この文脈を越えるにはそうとう無理な飛躍を要する。
VOX POPULIは津山から全国にパンク網を張ってきたレーベルで、主宰者はSKIZOPHRENIAのフロントマン。プラトーンズとも、前段には北欧パンク・シーンとの絆がある。個人的に、同地のVASTUSTAの1stデモを所持しているが、VOX POPULIは彼らのツアーもアテンドしていた。いわゆるRaw Punkと称されるフィニッシュ・スタイル。その高速ビートによる生々しいサウンドは日本でも人気が高く、フィンランド語にこだわり取り組むバンドもいるほど。音だけならSKIZOPHRENIAも同系といっていい。
しかし同地とはいえ、プラトーンズは真逆。VOX POPULIからのリリースではTIIKERIに近い。“フィンランドのBLUE HEARTS”との異名もあるように非凡なメロディセンスをもつが、プラトーンズはそのようなビートパンクを巧妙に避け、ニューウェイヴ経由でパンクをかます。その“こころ”は、シンセがギターの代替であるということ。シンセパンクとの新語で昨今再評価されている類に近いが、シティポップが近年取り込むシンセポップのようなものとはやはりちがう。プラトーンズのフロントであるROTOのソロ『音楽[Music]』(2021年)がシンセポップだったとはいえ、シティポップ・ファンがプラトーンズをスルーする確立は高いだろうし、引き合いにされる定番が名古屋のXERO FICTIONというのも得心がいく。
ROTO同様、XERO FICTIONのフロントも女性だが、いちばんの共通点はポップへ傾倒する所作。XERO FICTIONならハードコアへの頭打ちによる課題や反動が現在のスタイルへと導く起因となった。メロコア世代でもある彼らには十分な素地があったわけだが、仮にそこからシティポップへと舵を切らせるにはどれほどの下駄を履かせればいいのか。そんな下駄などまっぴらだと、彼らなら袖にするだろうけど。

XERO FICTION/SKIZOPHRENIA!
「Same」
(Xero Xero Records)
リレーションシップを象徴する2024年のスプリットEP。銘々が2曲演奏するなか、いずれもTHE SICK(津山)のカバーを披露。夭逝したSICKのフロントへの追悼ともなった。SICKもそうだが、ハードコアの宿命ともいうべき臨界点と、作曲・演奏力の向上が同期するようにおとずれると、バンドは進化、軟化、転生、ときに解散へと追い込まれる。プラトーンズも最初のミニアルバム『Wash Me With Love』(2017年)からパワーポップではあったが、ROTOの歌唱にはやさぐれ感がまだ残っていた。
Profile
若杉実/わかすぎ みのる:足利出身の文筆家。 CD、DVD企画も手がける。 RADIO-i (愛知国際放送)、 Shibuya-FMなどラジオのパーソナリティも担当していた。 著書に『渋谷系』『東京レコ屋ヒストリー』 『裏ブルーノート』 『裏口音学』 『ダンスの時代』 『Jダンス』など。ご意見メールはwakasugiminoru@hotmail.com
