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ニョッキ

イタリア人が愛してやまない家庭料理のひとつ、ニョッキ。可愛らしい響の名前だが、綴りはGNOCCHIとイタリア語を知らないと発音しづらい。パスタの一種で、ジャガイモと小麦粉でできているプリモ。プリモとはパスタ、米、スープなどで、イタリアのコース料理で前菜の後、食事の初めに食べられる料理の呼称。
イタリアには古くから「木曜日はニョッキ、金曜日は魚、土曜日はトリッパ」という言葉がある。これはキリストが亡くなった金曜日は肉食を避けるので、前日はお腹にたまるニョッキを食べるという宗教的な習慣。土曜日は祭日である日曜日のご馳走のために牛や豚を解体するので、前日は粗末な部位でトリッパ(牛の胃袋)でも、という理由から。謂れはローマの貧しい層からで、一週間のメニューを取り決めるという意味のほかに、きっとこれだけ色々な物が食べたいね、という希望的な要素も入っていると私は思う。
ニョッキとほうれん草は早春の代表的な組み合わせ。リコッタチーズや松の実などを入れ、ペースト状にしたほうれん草のソースが一般的だが、生地に練り込むこともある。
食べても美味しいが、私はマンマ達が作る姿を見るのが好きだった。茹でたジャガイモを捏ねて団子状にし、ソースが絡みやすいよう一つ一つフォークで凹凸をつけていく。その過程が子供の泥遊びのようで楽しそう。マンマ達もそう思って作っているに違いない。

塩見 奈々江
しおみ ななえ/1983年東京都渋谷区生まれ。幼児期をイタリア、イギリスで過ごし大学進学でフィレンツェに渡り10年間暮らす。 現在は足利市の里山と東京の2拠点で暮らしながら、展示会やネットなどでヨーロッパの古道具を扱うBAGATTOを営む。
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