
“ POP & BERRY, SWEET 栃木 ”
渡良瀬滑走路読者の栃木県民のみなさん、突然ですが、宇都宮にある栃木県庁を訪れた事はありますでしょうか?
今年は、長く海外へ居住している関係で諸々日本に戻って申請する書類等があり年末早めに一時帰国をしたのですが、そんな中、栃木県庁でとても新鮮な体験に恵まれました。
今回、栃木県の足利市出身でありながら、人生で初めて栃木県の県庁へ足を運んできました。
諸々書類の手続きを済ませ、支払いの際に担当の方から「2階にあるサービスカウンターにて証紙を購入して頂いてのお支払いになります。」との事だったので、1階から上へ上がったんです。
その際、横切ったエレベーターホールにふと目が行きました。
さすが県庁という事で、ロビーも広く閑静な雰囲気に包まれているのですが、エレベーターの開閉扉に栃木県の名産である「いちご」の水彩イラストが装飾されていたんです。
一般的にグレーで無機質なエレベーターホールが、この一枚、一粒のいちごの存在でその小さな空間がちょっぴりPOPな雰囲気を演出していて小さな感動がありました。
僕自身、台湾で本を出版した際にも挿絵として自分の作品を載せるほど、アート、特に水彩画には思い入れがあります。
なので、折角はるばる海外から帰国し県庁を訪れていましたので、ダメ元で担当の方、そして県庁の受付の方に広報の方にお会いできないか聞いてみました。
その結果、聞いてみるもんですね、お二人とも嫌な顔一つせず、とても丁寧に、且つ受付の方は何処の馬の骨かもわからない僕のだいぶ変化球なお願いをむしろ少し楽しんで下さっている雰囲気もあるくらい真摯に対応して下さり、なんとアポイントもないのに飛び込みで広報の担当の方とその流れでお会いできることになったんです。
そして3階の広報室へ実際に行ってみると、まだお忙しくされている午前中の時間だったのにも関わらず3人もの担当の方がわざわざ話を聞きに出て来て下さり、本格的に広報課の活動内容から宇都宮の事まで色々な説明をして下さいました。
その際、渡された名刺がまた印象的だったんです。
とても柔らかい印象の名刺の他に、ご自身で創られたというこれも栃木の「いちご」が目一杯施されたとても眼を惹くPOPなデザインだったんです。
これまで、イギリス、シンガポール、中国、台湾、日本、そして今年アメリカと、それぞれの国で長期に渡って撮影、仕事を合法的にする為に様々な現地の公的機関に足を運んできました。
その経験から、公の機関であればあるほど、そして特に大きな組織になればなるほど、所謂「あそび心」とは逆の印象を受ける対応の仕方や場所の雰囲気がある事を肌で感じていました。
その分、今回栃木県民として初めて栃木県庁を訪れた訳なのですが、その短時間の間に、とても協力的な人柄の職員さんと会い、建物のちょっとした空間にも小さな演出を見つけ、そして名刺一つを取っても「あっ」と思う様なPOPな体験を立て続けに経験し、本来書類を申請しにきたのはとうに忘れて全く別の角度での嬉しい心持ちで県庁を後にする事になりました。
「お役所仕事」という言葉が一定のイメージを作ってしまいますが、今回この経験を経て、本当にひょんなことから自分の出身地である栃木県の県庁がこういった場所である事を知れて、何やら今までにない嬉しさを感じる体験となりました。
もし、栃木県庁が、名産「いちご」のイメージと共に、期間限定で建物全体の至る所を「いちご」の柄でラッピングする様な演出をほどこす期間があったりしたら、“日本唯一のPOPな県庁”になって面白そうですよね。

ふくち ゆうすけ
1984年足利市生まれ。俳優。
20代を東京、欧米で過ごした後、独学で中国語を修得。現在台湾、シンガポール、中国、日本を拠点に活動、その各国に主演作品を有している。近年、自身の水彩画やエッセイなどの創作が注目を集め、書籍出版や連載、講演等の依頼へも積極的に参加している。
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