
天才科学者でも避けては通れない“もう一つの脳力 ”
突然ですが皆さん、もし「ピカイチの天才科学者」の役を演じなければならないという状況になったら、まず最初にどんな人物像がパッと浮かびますか?
僕は以前、とある台湾映画で「若くして世界中から称賛を浴びた天才・天文学者」の役を演じた事があるんです。
僕はこれまで高校から文系の道を歩いて来ましたので、理系の知識レベルはこの役柄とは天と地程の差があります。
そう言った事もあり、製作側のスタッフさん主導の元、撮影が始まる前の段階で台湾に在住の日本人の天文学教授を大学に訪ねる機会を頂くことができました。
数時間の訪問でしたが、ブラックホールや銀河について、その最新観測方法など、僕自身これまで触れて来ていない分野だった事もり、脚本に沿った役柄に関する諸々の専門的なアドバイスをはじめ、そのやり取りの中だけでも膨大なのヒントを得る結果となりました。
しかし、この数時間のお話の中で僕が最も驚いた発見は天文学の専門とは全く関係のない事でした。
最初に皆さんに質問した内容覚えていますか?
「ピカイチな天才・科学者」を思い浮かべた際にどんな人物像を頭に描くか。
きっと、普段何を考えているのか分からないのにとある瞬間雷の様に誰も思いつかないひらめきが降りてくる風変わりな人だったり、そのひらめいた内容が天才過ぎて、周りが全くついていけず本人しか分からないと言った様な、大多数の中で唯一その人にしか理解できないレベルの知能の持ち主、と言ったイメージを浮かべる人が多いのではないでしょうか?
僕が訪れた天文学教授によると、それとは全く違うのだそうです。
どんなに唯一無二のアイデアが思いつこうと、どんなに素晴らしい方法で回答に辿り着こうと、最終的にその理論、アイデアをちゃんと自身の論文として発表して初めて学者としての評価を得る事になる為、飛躍的な内容であればあるほど、「自分の考えを自分以外にちゃんと正しく伝えられる能力」に長けていなければならないのだそうです。
つまり、どんな「ピカイチな天才・科学者」であろうと、「斬新すぎて何を言っているのか分からない」と言った人物像ではなく、自分の奇抜な理論、異質な発見に関して「誰よりも人に伝えるのが上手い」人物である必要があるという事です。
このギャップ、僕たちがまず思い浮かべる天才・科学者像とかなりの差がありますよね。
僕もこの内容を聞いてとても目に鱗でした。
みんなと違う考え方を持っていれば持っているほど、逆に誰よりもまともである事が求められる世界。
そういえば、日本のお笑い界でも、破天荒に見えて、芸人ほどまともな人間はいない、と言われていたりもしますよね。
何かユニークな結果を残そうと努力するにあたって、その特殊能力の倍、まともであるレベルも高い必要があるのだなぁと、深く印象に残ったのを今でも色濃く覚えています。

ふくち ゆうすけ
1984年足利市生まれ。俳優。
20代を東京、欧米で過ごした後、独学で中国語を修得。現在台湾、シンガポール、中国、日本を拠点に活動、その各国に主演作品を有している。近年、自身の水彩画やエッセイなどの創作が注目を集め、書籍出版や連載、講演等の依頼へも積極的に参加している。
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