史跡足利学校企画展 「江戸時代における儒教のひろがり」 史跡足利学校ならではの視点で紹介

 史跡足利学校事務所主催の企画展「江戸時代における儒教のひろがり」が足利学校遺蹟図書館(史跡足利学校内/足利市昌平町2338)で開催されている(~2026年2月1日まで)。江戸時代に君主・為政者(政治を行う者)から庶民に至るまで、広く人々に浸透した「儒教」について同学校の所蔵資料を通して紹介している。

 儒教は、紀元前6世紀の中国で孔子が説いた教えと、その後継者によって伝えられた思想。日本には、仏教より早い4世紀頃には伝来したと言われている。古くは、政治を司る上級階級に向け、あるべき姿や心得を教える学問として受け入れらてきた。江戸時代中期以降は、藩校や寺子屋が発達するなどし、身分を問はず庶民も儒教をもとにした教育を受けるようになった。

展示は21の資料を、7つのカテゴリーに分け紹介。

  • 儒教で特に重視された経典の中から「論語」と「書経」。
  • 徳川家康が足利学校第9世庠主閑室元佶(三要)に命じて刊行した「孔子家語」。
  • 政治を行う者が学んだ帝王学の書と「善を勧め悪を戒める」の意味を表す勧戒画等。
  • 儒教を重んじた5代将軍徳川綱吉に因んだ紹介。同足利学校でも馴染みの深い、孔子とその弟子を祀る儀式『釋奠』等。
  • 庶民が寺子屋などでの教科書として使った「往来物」。
  • 儒教思想をわかりやすく学べるよう、経典に絵を加えた「教訓書」。
  • 儒教の影響を受けた徒然草や南総里見八犬伝などの文学。

 そして、同展の注目の展示が「四書章句集註」。これは徳川綱吉が自ら、諸大名・幕臣・公卿などに講義するために刊行した書物である。四書とは儒教の経典のうち「大学」「中庸」「論語」「孟子」を指す。
 また、展示の一画には『かな読八犬伝』の塗り絵の用紙も用意されている。楽しみながら、物語を通して儒教に由来する8つの徳目を知ることができる。

場所 足利学校遺蹟図書館(史跡足利学校内/足利市昌平町2338)
会期 2025年12月9日(火)~2026年2月1日(日)
展示時間 午前9時~午後4時30分
参観料 一般480円、高校生240円、小中学生120円
休館日 年末年始、2026年1月21日(水)
ギャラリートーク 2026年1月18日(日)午前11時~午前11時30分
問合せ 史跡足利学校事務所 0284-41-2661

釋奠之図 徳川綱吉は朱子学を奨励し、元禄4年幕府主催の初めての釋奠を行い、以後各地の孔子廟や藩校で行われるようになった。「釋奠」を場面ごとに描いた絵巻。
四書章句集註 同書の旧蔵者は仙台藩主伊達(藤原)綱村で、箱書に綱吉自筆の墨字があることから、伊達綱村が綱吉から講義を受けたことがわかる。
絵本忠経 「忠経」は君主に仕える者は忠を尽くすべきと記されており、本書は仮名と解釈を付け、さらに忠臣高名の絵を加えている。絵は浮世絵師・葛飾北斎が手掛けたもの。
絵本孝経 「孝経」孔子と門弟の曽子が、親に対して子が敬い支えることについて交わした問答が記されている。絵は葛飾北斎が手掛け、10人の男たちが「孝」の字をたわしで磨いている場面。
論語集解 市指定文化財 社会的な人間としての道徳的なあり方が説かれている。中国・魏の何晏(かあん)が論語に注をつけたもの。枠の中が本文、枠外の文字は勉学の折、書き加えられたもの。
帝鑑図画稿断簡 帝王学をといた「帝鑑図説」をもとに描かれた絵画。図は戒めとすべき悪行8話が描かれている。狩野探幽が手掛けたと伝えられている。
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この記事を書いた人

松尾幸子のアバター 松尾幸子 minimu 編集人・ライター

タウン情報誌の編集を経て、minimu 創刊号(2024年1月号)より、フリーの編集人・ライターとして活動中。地域の皆さんに良質で明るい情報を届けるべく、編集・取材を続けています。
逆境には強いが涙腺は弱い。スポーツジムが憩いの場です。
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