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若杉実の裏口音学 Vol.127

2025 1/30
裏口音学
2025年1月30日
目次

61歳からのヒステリックグラマー

 立川志らく、61にしてヒスを着こなす。べつにそういう話ではないが、例のパーカー論争(女性コラムニストのSNS上の発言「40になってパーカー着るおじさんはヘン」)に端を発した志らくのどうでもいいツイート「還暦過ぎたやつがヒステリックグラマー着ているのはどうなんだよ」には、足利人なら血も騒ごうというもの。そう、ヒス初の直営店は市内永楽町にあった。 
 キンカ堂(内のキディランドにミスド)を対面に、マック、デプト、モスが並び、真裏に現在も営業しているクリームソーダがあった。あの一帯を“北関東の原宿”と呼ぶことに異論などあるだろうか。というより、原宿以上に原宿だった。高校時、定期的にリアル原宿に通ってはいたが、ヒスの敷居をまたぐときの緊張感とくらべたらたいしたことはない。ジョニオ(桐生)のような両毛のファッショニスタ(苦笑)も似たような経験をしていたと聞く。
 ただし、それ以上にヤバかったのがヒスの前身である10KHz。初代は北仲通りにあったが、原宿のA STORE ROBOTのようで、店内には壊れたテレビやマネキンが無造作に転がっていてビビった。勇気を出し暖簾をくぐったのが中坊のとき。このときのコーディネイトが我ながらイケていたようにおもえる。「ヘンなカッコをしていればそれ風にみえるはず」ー母親のクローゼットを漁りまくった日がなつかしい。
 そんな酸っぱすぎる想い出を、何十年後に深夜の代官山で酒の肴にするとは……
 過日、NYの友人から「いいひとだから」と紹介され、帰国していたその方、下川さんとクラブで落ち合う。たしかに長年NYに住んでいたようにはみえない。しかし話の穂を継ぐなか、それが意外な方向へと崩れるように傾くー「鑁阿寺の近くに3年ほど住んでましたよ、退屈だったけど」。おどろくのもつかの間、そう苦笑いされたところでぐうの音も出ない。下川さんの過去がなによりぶっ飛んでいるのだから。70年代末に渡米しパンクバンドにギターで参加、80年代を迎えるとヒップホップの洗礼を浴び、現在も所属するDEATH COMET CREWに合流。「よくツルんでましたね、ラッパー、DJ、グラフィティ系……」。バスキアからラメルジーまで連なる共演リストにおどろかないひとがいるだろうか。後日調べてみると、どれもこれも事実。二度びっくりだが、一点だけそうではないことが。下川さんの容姿がいまとだいぶちがう。
 それはそうと、会話が一周して“退屈”にしていたことへの疑問が三たび頭をもたげた。まさに「YOUは何しに足利へ?」。いわく「オゾンコミュニティ(ヒスの会社)の仕事だったんですよ」。丁稚奉公というやつだろうか。90年代中ごろの話だが、ここはわたしも部外者として耳を傾けるしかない。上京後に一度も帰省しなかった8年間とかぶるからだが、当時の“異変”は風の便りに聞いてはいた。例の花火大会前夜祭でのシーラ・Eの奇行ぶりとか山中でのレイヴとか。そして、それらのほぼすべてに下川さんが関与していた事実を知り腹に落ちる、あぁやっぱりと。
 北関東に出現した幻の原宿。令和のいま、そんな話をありがたがるひとがいるのかはわからないが、還暦を過ぎてまで自分の身なりを語るようなオッサンにだけはならないようにしたい。

DEATH COMET CREW
『Ghost Among The Crew』
(Diagonal)

BLACK RAIN
『Neuromancer』
(Room40)
1983年の結成以来、断続的に暗躍してきた生けるオールドスクールが“死の彗星”を名乗る。そのアイロニーの解読書ともいえる2014年の完全復活作(上掲)は、ラメルジー(2010年没)への追悼も兼ねた初アルバム。エレクトロをリバイバルではなくリアルに体現する真のアンダーグラウンド。BLACK RAINは分体として90年代に始動したポストインダストリアル系。近年のダークアンビエントにも照準を定めた2024年の最新作。

Profile
若杉実/わかすぎ みのる:足利出身の文筆家。 CD、DVD企画も手がける。 RADIO-i (愛知国際放送)、 Shibuya-FMなどラジオのパーソナリティも担当していた。 著書に『渋谷系』『東京レコ屋ヒストリー』 『裏ブルーノート』 『裏口音学』 『ダンスの時代』 『Jダンス』など。ご意見メールはwakasugiminoru@hotmail.com

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  • 塩見奈々江 テーブル上の季節 「セロリ」
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