MENU
  • イベント情報
  • 週刊渡良瀬通信
  • 街トピ
  • 掲示板
  • 編集日記渡良瀬通信編集室から両毛地域であった出来事を発信しています。
  • 特集
  • テーブル上の季節
  • 渡良瀬滑走路
渡良瀬川沿い両毛地域のホッとする情報を発信しています。
minimu digital
minimu digital
  1. ホーム
  2. 裏口音学
  3. 若杉実の裏口音学 Vol.132

若杉実の裏口音学 Vol.132

2025 7/08
裏口音学
2025年7月8日
石崎忍
「ルーズソックス」(from『Timeless Affair』)
(What’s New)
目次

ジャズとルーズソックスと…

 茶髪、顔黒、援交、プリクラ、テレクラ、ブルセラ……家田荘子の著の世界とおなじ空気を吸っていながら、一ミリたりとも接点がなかった渋谷センター街にたむろしていた90年代の女子高生。その象徴物だったルーズソックスが令和のいまリバイバルしているというネットニュースをクリックしてしまったがゆえにみつけてしまったジャズとの禁断の関係におどろきを禁じ得ない。
 その名も「ルーズソックス」(2002年)という曲を演奏していたアルトサックスの石崎忍。俳優の石崎二郎と声楽家・竹村靖子のあいだに生まれたというから謎は深い。
 曲はラップを部分的にかましたジャズファンク。ミドルスクールのジャズラップを踏襲したことに深い意図はないのだろうが、軸足のジャズは弛まず、ルーズソックスとの不即不離の関係が築かれ、渋谷の一風景と達観するのが読みとれる。女子高生を客体化させジャズにおける異化効果を引き出したといえばよいか。
 考えすぎかもしれないが、石崎の経歴上、自然に対応できる環境にあったのかもしれない。90年代の初頭にバークリーへ留学、中盤にニューヨークへ移住、2014年にニューヨークへ再移住。断続的であるゆえ、ルーズソックス全盛期の空気を実感として所持していない。
 ただし、希薄だからこそ妄想に資するならこの推理は成立しないが、心あたりはある。毎日みせられ刷り込まされたルーズソックスは、性の対象になるようなものではないということ。幾重にも重なる白妙の層にうっすら滲む黒ずみ。雨ともなれば重力に逆らえない木綿が泥よけ代わりになる。脱いで絞ればコップ一杯分の濁り水が採集できるにちがいない。
 それがいいというフェチがいても、それを材に作曲することにも一定の理解はできる。即興を至上の創作とするジャズの辞書に完全という文字はないのだから。「おおいなる完成は欠けているようにみえる」ーー老子の句をまえに「ルーズソックス」ほど真価をみせる曲はないだろう。ただし、あの奇作をのぞいて。
 その奇作に触れる際、きわめて慎重にあつかわなければならない。石崎とおなじサックス(ただしテナー)吹きのデクスター・ゴードン(US)が70年代、滞在先のコペンハーゲンにて劇伴を担当、出演までした『Pornografi – En Musical』(1971年)というポルノ映画。それもハードコアというオマケまでつく酒池肉林にハードバップで絡んでいる。カラミこそしていないが、演奏模様を、リアルのカラミのあいだに挟んだりオーバーラップさせたりと、あらぬ演出にみえなくもない。背景を探るにも限界があるが、事実を知ったところで謎は深まるだけだろう。映像はそれほど衝撃的で、あらゆることばを無力にする。
 ゴードンはこのあと、実在のジャズメンがモデルの『Round Midnight』(1986年)に役者として主演、アカデミー賞にノミネートまでされた。前作つまり『Pornografi』での経験が生かさているはずはないが、あるとするなら銀幕デビューへの意欲をかき立てたことだろう。そして、どんな演出でもプレイに集中し無言をつらぬくこと。3度め(?)の役者となった『レナードの朝』(1990年)では主演のロバート・デ・ニーロに対し、セリフのない入院患者のピアニスト役で挑んでいる。

OLE EGE
『Pornografi – En Musical』
(DVD)

革命とはなにか。本監督オーレ・エゲいわく「エロスと音楽の斬新な蜜月だ」。ゴードンとともに参与するのは当時の鉄壁ケニー・ドリューのピアノトリオ。身過ぎのためか、魔が差しただけか。情報がなく出演理由は謎。墓場(1990年他界)までもっていく物件だったのだろうが、このようにDVD化され、動画で残る未来までは想定できなかったにちがいない。最初に発見した日の夜、わたしもうなされた。画像・動画検索はくれぐれも自己責任で。

Profile
若杉実/わかすぎ みのる:足利出身の文筆家。 CD、DVD企画も手がける。 RADIO-i (愛知国際放送)、 Shibuya-FMなどラジオのパーソナリティも担当していた。 著書に『渋谷系』『東京レコ屋ヒストリー』 『裏ブルーノート』 『裏口音学』 『ダンスの時代』 『Jダンス』など。ご意見メールはwakasugiminoru@hotmail.com

裏口音学
若杉実 裏口音学
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • 県指定文化財薬師如来坐像修復開始・クラファンなどの協力得て・制作年や作者分かる可能性も・川崎町の薬師寺所蔵
  • 第14回 市民手作り映像祭 映像が語りかける時間の尊さ

この記事を書いた人

watarasebc

関連記事

  • 若杉実の裏口音学 Vol.131
    2025年5月29日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.130
    2025年5月8日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.129
    2025年4月23日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.128
    2025年3月8日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.127
    2025年1月30日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.126
    2024年12月30日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.125
    2024年12月4日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.124
    2024年11月11日
タグで検索
Bリーグ FMDAMONO GUNMA CRANE THUNDERS JA足利 ViBLissマルシェ あしかがフラワーパークプラザ あしもり隊 きたごうモルッククラブ わたらせリバープラザ アシコタウン イルミネーション コラム テーブル上の季節 ヒラメkids モルック 両毛ヤクルト販売 佐野市 俳優 健康チェックシステム 助戸公民館 収穫祭 史跡足利学校 塩見奈々江 大岩山毘沙門天 太田市 山姥切国広展 岡田幸文 栃木県 栗田美術館 桐生市 福地祐介 群馬クレインサンダーズ 群馬県 若杉実 薬師寺 裏口音学 足利100年カルタ 足利デザイン・ビューティ専門学校 足利工業高校 足利市 足利市医師会付属准看護学校 足利市教育委員会 足利市立美術館 足利市美術館 JA足利
過去の記事
  • ホーム
  • 運営会社
  • お問い合わせ

© minimu digital.

目次