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若杉実の裏口音学 Vol.123

2024 10/09
裏口音学
2024年10月9日
目次

的を射る

 パリ五輪の興奮冷めやらぬまま、次回ロス五輪への出場をめざすドクター・ドレーが、中学時代に励んだアーチェリーを本気で練習しはじめたことが報じられた。
 説明するまでもなく彼の生業はラッパーである。まちがってもドレー医師ではないが、アーチェリーをやっていたという事実に衝撃を受けたひとはすくなくないだろう。アーチェリーより射撃をしている像しか浮かばないが、それ以前に中学生のドレー坊をイメージすることが不可能に近い。詰め襟こそ着ていないにせよ、ギャングスタラッパーに“未成年期”があったこと自体、考えられるものではない。
 これには理由がある。ギャングスタラップとは映画でいうならバイオレンス系だが、ことし50歳を迎えたヒップホップに対し、ギャングスタラップは30代半ば。来年還暦のドレーが二十代前半だったころで、つまり中坊のときギャングスタラップは生まれていなかった。それもそのはず、ギャングスタラップの鼻祖がドレー(周辺)であり、1986年のとき仲間と参加したN.W.Aが萌芽となった。
 そのN.W.Aはドレーを語るとき、ささやかなステータスとなる。「(ソロ前の)N.W.Aから聴いていた」と口にしたときの話者の小鼻を注意深くみるがいい。もぞもぞと動くだろうから。同時にこのことは、わたしがヒップホップをあまり語らなかった理由でもある。ようはステータスを持っていなかった。
 事実、N.W.Aから聴かなくなった・・・・・・・・。わたしにとってのドレーとは、さらにそれ以前に在籍していたWORLD CLASS WRECKIN’ CRUにほかならない。本名のアンドレ・ヤングを併記させていた十代最後の青春。源氏名もあれば、歌舞伎町にそのまま出勤できそうな風貌、アイシャドウにラメのスーツを身にまとっていた(写真中央)。
 WHOODINIの回(116)でも触れたが、オールドスクールのファッションは紙一重で、音は最先端なのに……という不均衡なカルチャーだったのは否めない(それも魅力だが)。藤原ヒロシがUK(パンク)ミックスで対処していたのもそのような背景があるからだろう。
 ただしファッションとは時代を映す鏡。風化こそ正義であるなら、ボンテージパンツに3本線(靴)の組み合わせはいまでもアリだから都合がわるい。
 ヒップホップ以降、ハズしの美学がダサかっこいいにまで加速したおかげで、オシャレの基準値がブレた。それも一筋縄ではいかないハーレム文化。過剰(金ジャラ)と過少の(露出)の二方面から時代を編む彼らのファッションには、着飾ること以上の深い意味がある。それを極東の人間が理解したつもりになるのもどうかとはおもうが。
 それでもアンドレ時代のドレーは……と首をかしげる者はハーレムの番人にもいた。N.W.Aの僚友だった故イージー・E.はドレーとのビーフで、アイシャドウにラメ時代を揶揄している。それも生前最後の『It’s On[Dr. Dre]187um Killa』(1993年)の裏表紙に当時の写真まで貼りつけ、嘲笑の的にしていた。
 ドレーはいま、90フィート先の的に矢を射つづけ練習している。この距離は五輪の出場資格より13フィートも長い。的紙は、効果を考えればいくらでも代用があるだろう。わたしなら五分刈りだった中坊時代の写真かな。

N.W.A
『Straight Outta Compton』
(Ruthless Records)

N.W.A=Niggaz Wit Attitudes(えらぶった黒人達)、1988年の処女作。ドレーがプロデュースだが、古巣時代のエレクトロから一転、ザラついた音は西から東への牽制でもあったのか。メンバー間の対立が絶えず、30歳で夭逝したイージーとの亀裂(末期に和解)が解散(1991年)へと追い込んだ。古巣のアルバムは1986年の2枚め。EP「The Fly」は日本のディスコでも小ヒット。同年DJイェラと離脱、N.W.Aに合流する。

プロフィール
わかすぎ みのる:足利出身の文筆家。 CD、DVD企画も手がける。 RADIO-i (愛知国際放送)、 Shibuya-FMなどラジオのパーソナリティも担当していた。 著書に『渋谷系』『東京レコ屋ヒストリー』 『裏ブルーノート』 『裏口音学』 『ダンスの時代』 『Jダンス』など。ご意見メールはwakasugiminoru@hotmail.com

裏口音学
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