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月光の魔術師 加藤千代 | 渡良瀬通信2012年2月号より

2024 7/08
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2024年7月8日

「染画」ロウ描きと染めのアート

 加藤さんの描く「染画」は、木枠にピンっと張った布に、ろうけつ染めの技法を用いて描かれた作品である。
 まず、下絵を半紙に描く、色は下絵の段階でつけられることはなく、全て制作の工程で加藤さんの頭の中で組み立てられていくのだという。木枠に貼られる布は木綿か麻、今は木綿の場合がほとんどだという。
 木枠に布をピンっと張る手法は、加藤さん独特の手法のようだ。ろうけつ染めでは、しばしば固まったロウがひび割れ、ろうけつ染め独特の亀裂模様を生む。しかし、加藤さんはこの亀裂模様を作ることはしない。むしろ、このひび割れを作らないように、布をしっかりとのばした状態ではり、そこに細かい線や形を描いていくのである。

制作風景1
制作風景2
制作風景3
野の詩

 構想を練って、表現したい形が決まったら、木枠に張った布に木炭を使ってその図案をトレースする。ここにロウを布に置くように描いていく。ロウ描きをした布を染料で染め、乾かして、さらにロウ描きをする。これを繰り返し作品が作られてゆく。ロウが伏せられた部分は染料に染まらず、布の色が残る。画面に残したい色ができたら、ロウで伏せてゆく。薄い色から濃い色へと重ねられ、加藤さんの頭の中で、出来上がりの色から逆算しながら作業が進められる。
 さらにあの繊細なグラデーションは、布が染みてゆくその力を使っているのだという。こうして生まれた作品は、キャンバスや紙に描かれたものには出せない、布のもつ独特の質感が魅力の染画となる

人を楽しませる達人は岩船山「クリフステージ」を創り上げてしまった

 加藤千代さんの魅力は、本誌で50回の連載をした作品だけではない。
 岩舟町(栃木県下都賀郡)の生家に併設したアトリエの裏には岩船山がひかえている。かつてはこの山から切り出した岩船石が、生家のそばの岩舟駅から関東一円に運び出されて行った。
 今では岩船山の南面に見事な断崖が残されているが、加藤さんはこの地で途方もない野外コンサートを計画した。それが「クリフステージ」だ。
 それまでにも栃木市の「蔵の街音楽祭」や知人たちが企画する演劇などへの協力を積極的にしていたのだが、何よりも自分のアトリエで時々催したイベントには、参加者を徹底的に楽しませる演出がちりばめられていた。
 「岩船山で野外コンサートをやらないか」
 そんな加藤さんの呼び掛けに、大勢の賛同者が集まった。そして2000年10月、一回目の「クリフステージ」が開催された。出演はジャズの大御所日野皓正(トランペット)と菊地雅章(まさぶみ/ピアノ)だった。
 前々日まで降り続いた雨で、会場は歩くのも大変なほどのぬかるみ状態。しかし地元の協力者がダンプカー600台分の砂利をあっという間に運び込み、整地までしてくれた。しかも無料で…。加藤さんの情熱に多くの岩舟人が動かされたのだった。
 あれから毎年、この「クリフステージ」を数千人の人たちが、心待ちにしている。今では出演者にこだわらない「クリフステージファン」もいるという。
 「クリフステージ」は完全に、岩舟町を代表するイベントに成長した。いや、北関東では有数の野外ライブと言っても過言ではないだろう。
 「クリフステージ」は今は若い人たちに受け継がれている。そして加藤さんといえば、自分の蒔いた種の逞しく成長する姿を見守り続けるのである。
※これまでの「クリフステージ」の主な出演者=日野皓正、菊地雅章、鬼太鼓座、斉藤ノブ、上田正樹、大橋純子、夏川りみ、古謝美佐子、上々颱風、大黒摩季、一青窈、TRF、PUFFY、SPEED、島谷ひとみ、他
※岩舟=地名、岩船=山の名称
 さて、加藤千代の月夜の神秘的な世界を旅してきた私たちだが、その旅もいよいよ最終回を迎え、次なる扉はどこに繋がっているのか、気になるところである。

純粋な心のままをデザインする染画

現代工芸 藤野屋 社主 小林建夫

 加藤千代さんが29歳の時、初めての個展を催した宇都宮の栃木会館2Fギャラリーに私は足を運びました。
 初めての個展というものは誰もがそうですが無我夢中で、少しでも自分の一番いいものを精一杯表現して恥ずかしくないモノにしなくては…という気概の中で初日を迎えるものです。
 案の定、その作品群は公募展に出品できる程の力作から、日常に使える工芸的なローケツ染めのスカーフまで並んでおりました。私がそれまでに見ていたグループ展での彼女の印象は、少し少女的なメルヘンを感じ過ぎていたのですが、反面その才能も同時に強く感じていたのです。それは他の絵描きとは違う、簡略化されたデザインと構成の明快さであり、さらに、これは大切な要素なのですが、工芸的な香りが薄いのです。
 染めとか織、陶芸や漆芸というのは、どこか職人的な香りが色濃く在るものなのですが、彼女にはそれがないのです。いいもの(作品)から難しいもの(作品)までが並ぶこの初個展で、必死に頑張る加藤千代を見た時、藤野屋の作家に加わってもらおう!と思ったのです。

 そして二年後、工芸的な作品は「帯」だけに絞り、他は総て染による「絵画的作品」で構成された第1回目の個展となったのです。加藤千代の感性をストレートに表現する事によって彼女の持つ「都会的」なセンスや彼女の一番いい部分でもある「古風な趣」、たとえば物腰、言葉、慣習、そして風土までも大切にしている作り手の独特の雰囲気というものが自然と作品の中に、色であったり、人物の表情であったり、風景の構成にまで影響して現れて来るのですが、その純粋な心のままをデザインした千代さんの染画は、ギャラリーとしては広い藤野屋の会場を連日多くのファンで埋め尽くす事になるのです…。

 加藤千代という作家は、作品がどんなに売れても千代という一女性のうぶな心を常に持っていて、一人一人を大切にしながら自らは強い向上心をいつも心に潜め置き、展覧会が終わるたびに言う事はひとつ「本当に来て下さった方も来られなかった方もみーんな含めて感謝です。」そして「また頑張ります」と言うのです。
 渡良瀬通信に加藤千代さんの作品を50回にわたって掲載して下さった、みにむさんには心から感謝申し上げる次第でございます。読者の皆様が何気なく見てくれていると、いつかどこかで作品に出逢う時、きっとなつかしく、いとおしくなっているのではないだろうか…とさえ思ってしまいます。それはこの50回4年2ヵ月という時間の中で、加藤千代という作家の想いが、作品を通して少しずつ入り込んでいきそうな永い時でもあるのです。

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minimuアーカイブはは過去に作成されたものであり、当時の時代背景や文体をそのまま反映しております。現在の表現方法とは異なる場合がございますので、ご理解の上お読みください。

渡良瀬通信2012年2月号より

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