MENU
  • イベント情報
  • 週刊渡良瀬通信
  • 街トピ
  • 掲示板
  • 編集日記渡良瀬通信編集室から両毛地域であった出来事を発信しています。
  • 特集
  • テーブル上の季節
  • 渡良瀬滑走路
渡良瀬川沿い両毛地域のホッとする情報を発信しています。
minimu digital
minimu digital
  1. ホーム
  2. 裏口音学
  3. 若杉実の裏口音学 Vol.120

若杉実の裏口音学 Vol.120

2024 7/02
裏口音学
2024年6月26日2024年7月2日

黒いカントリー

 “ビヨンセの新作が意表をつくカントリーですごい”という報道から2ヶ月。それでもこの話題に便乗する価値があるのか。考えあぐねるまでもなく、あるあるなので取りあげる。
 その新作には『Cowboy Carter』というい文字が躍る。R&Bシンガーが取り組んだカントリーということから各方面でてんやわんやになった。
 しかし論法がパターン化していて、概してこんなかんじだろうか。ヒューストン生まれのビヨンセは母親がルイジアナ・クレオールで、幼少時からカントリーを聴き、家族でロデオに参加するなど南部文化に親しんできた。また、カントリーの花形楽器バンジョーはそもそも黒人移民が発明したもの。よって新作を取り巻く事象は理にかなう、と。
 だが、なにかが欠けている。そう口にすることすらはばかれるのか、大事な一枚が紹介されていない。
 ベース奏者のバッド・バスコムが1973年に発表していた『Black Grass Music』。“黒人版ブルーグラス”とはわかりやすい。ブルーグラスはカントリーにアイリッシュ系の伝承音楽が混ざったもの。厳密には兄弟関係だが、語呂合わせを優先しただけだろう、“Black Country”だと野暮ったいし。クールにしなければならないのは、カントリーを取り入れたファンクだからである。
 ならば、軸足がカントリーのビヨンセとは対極にあるのかといえば、そうともいえない。黒人初のカントリーチャート首位となった先行シングル「Texas Hold’em」には、R&Bテイストがほのかに漂う四つ打ちが敷かれるが、これにはバスコムの表題曲「Black Grass」との近似値がみられる。
 「Black Grass」はそもそもブレイクビーツの古典で、これまでサンプリングされた曲は数知れず。ビヨンセ&ジェイ・Z夫妻の諸作にこそ見当たらないが、近年ならタイラー・ザ・クリエイターが使用したり、わたしの世代だとジャングル・ブラザーズなどで知られている。さらに古いところではディスコ・フォーのその名も「Country Rap And Rock」なんてものまで。ENJOYレーベルらしいカバーラップ系だが、ここまでやるとキワモノ感は否めない。裏を返せば『Cowboy Carter』はそれだけメッセージ性に富み、政治的言動が増加傾向にあるビヨンセの最新の“声”といえるわけだが。
 本来カントリー愛好家はクリティカルな姿勢を作品にもとめたりはしなかった。星条旗を象徴する音楽、保守や愛国といった属性があるからだが、近年それが対立や分断に“利用”されることが多い。ビヨンセも一部のカントリー専門ラジオからボイコットされている。彼女はそれでも誇るべきルーツに身を置き、すなわち内側から真の愛国心とはなにかと問いただす。
 たとえば曲名“Texas Hold’em”とはポーカーの一種だが、冒頭から「〽︎そんなのテキサス流じゃない」と挑発すれば、若者に右往左往させられ肩をすくめる描写があるなど、もはやそういうのが時代遅れだと諭す。“カード”にかけ反トランプの意思表示とも読めるが(あまり指摘されないが)、右に左にと裏で糸を引く者には気をつけなさいということだろう。ポーカーフェイスな彼らの“黒さ”さえまやかしでしかない。

BAD BASCOMB
『Black Grass Music』
(Paramount Records)

BEYONCÉ
『Cowboy Carter』
(Parkwood Entertainment)
伏線となった「Daddy Lessons」(2016年)をCMAにてザ・チックスと共演。アルバム8枚めで全カントリーに挑む。御大ウィリー・ネルソン、元祖テイラー・スウィフトとも呼べるドリー・パートンが参加。そのドリー作「Jolene」を自己流にカバー。『Black Grass Music』について。“やさぐれトランペッター”ことポール・バスコムを父にもつベーシストの数少ないソロ。編曲はジャズファンク系のホレス・オット。

裏口音学
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • THESPA GUNMA LADIES News_2407
  • モルックで仲間づくり、健康づくりを・市内150以上のいきいきサロンに用具を配布・足利市社会福祉協議会

関連記事

  • 若杉実の裏口音学 Vol.131
    2025年5月29日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.130
    2025年5月8日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.129
    2025年4月23日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.128
    2025年3月8日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.127
    2025年1月30日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.126
    2024年12月30日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.125
    2024年12月4日
  • 若杉実の裏口音学 Vol.124
    2024年11月11日
タグで検索
Bリーグ FMDAMONO GUNMA CRANE THUNDERS JA足利 あしかがフラワーパークプラザ あしもり隊 きたごうモルッククラブ わたらせリバープラザ アシコタウン グルメ ココファーム コラム テーブル上の季節 ヒラメkids マラソン モルック レストラン 両毛ヤクルト販売 佐野市 信長の野望 俳優 出初式 史跡足利学校 塩見奈々江 太田市 宇都宮ブリッツェン 山姥切国広展 早川尚秀 栃木県 桐生市 白鴎大学 福地祐介 群馬クレインサンダーズ 群馬県 若杉実 裏口音学 襟川陽一 足利デザイン・ビューティ専門学校 足利市 足利市教育委員会 足利市社会福祉協議会 足利市美術館 足利織姫神社 鑁阿寺 JA足利
過去の記事
  • ホーム
  • 運営会社
  • お問い合わせ

© minimu digital.