
『台湾スーパーマーケットお花事件』報告書。
みなさん、最近スーパーに行ったのはいつですか?
僕は台湾で大体週に2回、近くのスーパーへ買い物に行っています。
ここ数年、環境への配慮等の理由からレジ袋が有料になりエコバック等を持参する方がとても増えましたよね。これは、日本でも台湾でも同じ様によく目にする光景になりました。
先日、僕の通うスーパーでこんな事がありました。
レジを済ませ、買い物カゴの中にある商品をエコバッグに移そうとレジ横のテーブルへ移動しました。(ビニール袋とかが置いてあるあそこですね。台湾にもあのエリアがあるんです。奇遇ですね。)
商品を一つ一つ移していると、僕の右手横にとあるものが眼に入ったんです。
それは、ちょうど壁とガラス窓の角のくぼみに立てかけてある買ったばかりの「お花」でした。
きっとどなたかが僕が来る前にこのテーブルで商品を整理している内に、購入したお花を立てかけたまま入れるのを忘れてその場を離れていってしまったのでしょう。
僕は思いました。
「これ、お店の人に渡した方がいいのかな。でも、もうかなり前にここに置いていってしまったのならお店の人に渡しても問題ないと思うけど、もし今さっきここに置き忘れてしまったのなら目の前の駐車場で気づいて取りに来るかもしれない。だとしたら、きっとまず急いで自分が商品を整理した場所を見に来るだろうから、その場合ここに置いたままにした方がいいなぁ。でも、誰かに持っていかれちゃうかもしれないなぁ。はて、どうしたものか。」
僕は自分の商品を整理している間中、この自問自答に想像力を働かせました。
そして僕は最終的に決断を下したのです。
「今最も混んでる時間帯だしレジも一つじゃないから、もし急いで取りに帰ってきて元の場所になかった場合、その人が僕が預けた店員さんに話しかけるかも分からない。よし、ここは取りに帰ってくると踏んでここに置いておくことにしよう。”お花さんよ、不安だろうがちょいと待っててみておくんなまし。”」
そう僕は心に決めて角にある花に目配せをしながらその場を離れました。
そして僕がレジのカートを戻し、スーパーから外に出たタイミングでの事でした。
メガネをかけた小柄なおばさんが急いで店の中に駆け込んでいきました。
外からガラス越しにその様子を見守っていると、一目散にさっき僕が置いたままにした角に立てかけてあるお花の元へ行き、その花は無事主人の手元へと戻ることとなりました。
よしよし、これにて一件落着。
僕は中村主水を彷彿をさせる得意げな背中を向けながら、静かにその場を後にしたのでした。
…とまぁ最終的に事なきを得たのですが、これ、皆さんどう思いますか?
結果的に今回は僕がそこに置いていった事が功を奏しましたが、さっきのおばさんがもうかなり前にお店を離れてしまっていたとしたらそのお花はきっと閉店まで後の数時間ずっとそこに置いたままになっていたという事になります。
自分も出先で忘れ物をした際の経験と焦り具合を知っているので、最善の選択をしたつもりなのですが要は「紙一重の親切」ですよね。
この場合、普段の皆さんならどういう選択をとりますか?
何はともあれ、しっかり相手に届く「親切」が如何に難しい事であるかを少し垣間見た「スーパーお花事件」でした。

ふくち ゆうすけ
1984年足利市生まれ。俳優。
20代を東京、欧米で過ごした後、独学で中国語を修得。現在台湾、シンガポール、中国、日本を拠点に活動、その各国に主演作品を有している。近年、自身の水彩画やエッセイなどの創作が注目を集め、書籍出版や連載、講演等の依頼へも積極的に参加している。
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