地域とプロスポーツ
足利市は今年の2月に、栃木市を拠点とするプロサッカーチーム 栃木シティのホームタウンに加わることとなった。これまでの足利市には“プロ”のスポーツチームがなかったものの、昨年の男子プロバレーボールチーム Reve’s栃木のVリーグ参戦、そして今回の栃木シティの動きによって、急速にプロスポーツが広まりをみせている。
足利にやってきたのは、今からおよそ2年前。来てそうそうこの町が持つ魅力 (自然や歴史、さまざまなお店) やこの町に住む人に惹かれ、今やこのような記事を書くまでに至っている。それに関しては前々号でも書かせていただいている。
ただ、こうして、足利市に来た時のことを思い返すと、当時の自分は足利市に対してある種の“物足りなさ”を感じていたように思う。それは決して物質的に物足りないということではないのだが、これまで自分が住んでいた地域と比較して決定的に足りないものがあった。
共通の話題が少ない
いろいろなところへ顔を出し、さまざまな人と関わらせていただくなかで、みなさん町を盛り上げるために苦心し、またその姿がかっこよく自分には写っていた。ただ、多くを回るうちに、そうしたグループがたくさんあることは分かれど、足利全体として、ひとつのまとまりとして、共通の話題や意識を持って動いているという部分が希薄であることが分かってきた。それぞれのグループがそれぞれで頑張り、その一方で、足利全体が、みなさんがもつ、共通の話題、関心というものが見えてこなかった。来たばかりの自分は、結局、足利がどういうまちなのかということをつかむことが難しかったことを記憶している。
大学進学を機に、北海道から広島へ渡ったとき、目の前に広がる世界のほとんどが知らない状態であった。それは足利に来た時とまるで似ており、ワクワクを感じながらも、生きて行くために頑張らないとと思ったほどである。ただ、足利に来た時と決定的に違ったのは、広島には共通の話題があったということ。そこには広島東洋カープという共通の話題があったこと。足利を経験した今、この違いはとても大きかったように思う。程度の差はあれど、ほとんどの人が広島東洋カープに関心をもち、ファンでない人であっても、父親や親戚がファンであるといったように、なにかしらの紐づけがなされていた。そのようなコミュニティでは、共通の話題があるからこそ話がしやすかった。
考えてみれば地元にも北海道ニッポンハムファイターズがあり、すなわち、こうしたプロスポーツがもたらす共通の話題のある地域に暮らすことがあたりまえであった。だからこそ、足利に来た時に、物足りなさを感じてしまったのかもしれない。
世の中、さまざまな人がいるのが当たり前であり、さまざまに考えることもまた当たり前。みなが普通に生きていれば、たとえ同じところに住んでいたとしても、まとまりが生まれることはとても難しい。しかしそこに共通の話題があると、一体感が生まれ、まちのみんなが同じ方向をみることができる。さらに言えば、町の外の人間がその街を捉えやすい。「広島はカープでも有名なまちである」といったように。
バレーボール、それからサッカーの“プロ”チームがこの足利にやってきているということは、共通の話題をもたらすという点で、とても重要な意味をもつと考えている。単に応援して楽しむというだけでなく、まちが共通した話題をもてる契機となることも踏まえて、みんなで応援していくことが重要かと考える。