力丸くん
連日完売のブランド卵

今から74年前の昭和25年、戦後の食糧難時代。足利生まれの青年・三田孝之さんが、何か食品を作りたいという思いで鶏を飼い始めた。それが、後に人気のブランド卵「パワードエッグ力丸くん」を世に出す三田鶏園の始まりだった。
卵は問屋に卸す相場で値段が決まり、中々利益が出なかった。だが2代目の悌二さんは、大手の養鶏場が高価なブランド卵を売り出したと知って、決断した。「ならばうちもブランド化して、自分で値段が決められる商品を作ろう!」…かくて、業界の常識に反し贅沢な飼料に徹底的にこだわったオリジナル卵の開発に踏み出し、ついに35年前、力丸くんは誕生した。
お客さんから〝力〟をもらって

今飼育している鶏は約3万羽で、力丸くんの値段は一般の卵の約2倍。店頭と口コミ頼りのネット販売のみで、スーパーへの卸売りもしない。それでも店頭ではほぼ毎日約1万5千個(多い時は2万個)を完売するという。取材時にも店内には常連客が途切れず、「他の卵を使ってみたら、いつも力丸くんを食べている家族にすぐバレてしまった」「力丸くんと米があれば生きられる」と言う人もいた。
現在の3代目・泰之代表は、実は当初は跡を継ぐ気のない会社員だった。しかし、何気なく店の手伝いをしていた際に常連客から言われた「後継ぎが帰って来てくれて良かった」「終わっちゃうと、卵がもう買えなくなるから困る」という言葉で、継ぐ決意をしたという。常連客たちの声は、力丸くんだけでなく3代目をも後押ししているのだ。
足利の町を歩けば、釜めし屋『銀釜』は「使いやすく、見栄えがいい」と力丸くんが誕生した時から愛用している。ベーカリーカフェ『南の麦』は、「少しでも体に良い物を」と約8年買い続けている。三田鶏園は飲食店ではないけれど、15年ほど前からは『足利うまいもの会』にも誘われて加盟した。
生卵が苦手な記者でも、卵かけご飯ですいすい食べることが出来た力丸くん。「長年のお客さんの期待を裏切らないようにしたい」と話す泰之さん達は、今後もパワフルにここ足利で力丸くんを産み続けていく。
(東武足利市駅南口から車で10分)

取材=大橋爽乃・橋本慎之介・鈴木菜仁・實川尚真
[白鴎大学地域メディア実践ゼミ]