萬福寺の御朱印
対面、直書き、自販機も

今から8年前の、平成27年。足利に長く続く萬福寺で、45代目住職の金子元行さんが、対面での御朱印〝直書き〟を始めた。下書きせず、目の前で一発で書き上げる直書き。その評判は次第に広まり、コロナ前のピーク時には1日120人が並び、住職が12時間無休で書き続けるほどの人気となった。
取材班も寺を訪ね、御朱印を書いてもらった。すると突然、ピアノの音色が! 気分を上げるために、音楽をかけるそうだ。手には、まさかの「百円ショップで買った」筆。毛先はご自身でカットして、こだわる。それを巧みに持ち替えながら、剣、炎、文字の順に「字を絵として書く」感覚でスラスラ描き進めていく。何万枚と描く中で構築された線の太さ、色彩、余白。大胆かつ繊細なスタイルだ。
住職のモットーは、御朱印を楽しく書く〝楽書き〟。「たくさん書くのは楽ではないけれど、楽しんで書けばきっと良いものになる」という前向きさは、対面書きだから直に参拝客にも伝わる。
楽しく〝楽書き〟「心を置いていって」

書いてもらう間「住職と他愛もない話をするのが楽しい」と言う女性客は、昨日もここに来たばかり。「スタンプでカラフルに仕上げる物が多い中、ここは全て直書き」と珍しがるのは、御朱印帳200冊以上というマニアの男性。「住職さんの圧倒的なオリジナリティーとセンス」に惹かれた別の男性は、6〜7年前から月1回は通っているという。お悩み相談で、泣いて帰る人もいるそうだ。住職は言う。「色んなお話をして、色々な心を置いていってほしい。」
一昨年の足利の大きな山火事では、1枚千円の「義援金御朱印」を企画。総額百万円以上が全国から集まり、市に全額寄付した。
賽銭箱のすぐ横には、寺の公式キャラクター「ねこだるま」が描かれた自販機が今年設置された。売り物は、飲み物と…書き置き御朱印! 確率10%で、一点物の直書き御朱印も手に入る。ユニークさと、住職が対応できない時にも御朱印が手に入る便利さが人気だ。「御朱印は、扉みたいなもの。もっと奥深く仏様を感じてほしい。」
―――今日も萬福寺は扉を開け、笑顔で参拝客を待っている。
(足利駅より車で10分)

取材=長嶋優太・岡結菜・小高明日奏
[白鴎大学地域メディア実践ゼミ]