徳正寺 まゆ玉市
色とりどりの手作り品

今から約50〜60年前、由緒ある徳正寺の「まゆ玉市」に縁日の屋台が置かれるようになり、賑やかなお祭りの形になった。元文4年(今から285年前)から始まったこの行事は、かつては養蚕家が「お蚕(かいこ)様が無事に育ちますように」「よい繭(まゆ)がたくさん採れますように」と祈願してお寺の舞台で演芸などを行っていたが、いつしか「織物が売れるように」「商売繁盛しますように」と願う人々が増えていった。
そして、学校の先生も兼任していた先代住職の釆澤良悦さんが、「若い人にももっと来てほしい」という思いから屋台を置いて、今の賑わいのきっかけを作ったのだ。
福徳円満の世を願って

毎年恒例の開催日である1月13日、実際に私たちもまゆ玉市に行ってみた。本堂に向かう途中、市が始まっていることを告げる発砲音が数回大きく響き渡り、周囲の人たちは驚きつつも「始まった、始まった」と笑顔になった。
お昼時の境内は賑わっていて、何よりびっくりしたのは高校生の姿が多いこと! 学校が近くにあるため、帰りに屋台の食べ物を楽しみに訪れたと言う。先代住職の思いは届いていた! 毎年のリピーター、東京からわざわざ来た方など理由も年齢も様々で、屋台もチョコバナナやポテト、焼きまんじゅう、だるま…と多彩!
参拝を終えた後、メインのまゆ玉飾りの売場を覗いた。昔は蚕から本物のまゆ玉を作っていたが、生産者が減った現在は、もなかの皮のような米粉で作られている。ずらり並んだまゆ玉飾りは、柳の木枝にピンクや黄色・青色など鮮やかな玉が付いており、他にも大きな鯛や可愛らしい招き猫、金色の米俵などが飾られている。一品一品がオリジナルの手作りで、大きさも飾り付けも少しずつ異なり、色とりどりでとても綺麗だ。
現住職の釆澤良浩さんは、「徳正寺は福徳円満の寺なので、多くの人が平和な世の中で暮らせるようになって欲しい」と話す。実際に訪れた会場も、本当に人々の平和な笑顔で溢れていた! 人気だった支援学校の子どもたちの作品販売も、コロナが収まったら再開するつもりだ。 (足利駅から車7分)

取材=川野辺茜・中村花菜・市川柊雅
[白鴎大学地域メディア実践ゼミ]