「猫又屋」のカクテル
足利で世界2位の味を

今から12年前の、平成23年。カクテルの世界大会で、足利のバーテンダーが日本人初の準優勝を果たした。その人、新井洋史さんが経営するのはバー「猫又屋」。猫又とは、猫の長生きした化身のことだ。店の長寿を願った創業者である父の命名通り、今や足利で42年愛され続ける名店となった。
人生初バーの学生記者は、実はドキドキしていた。新井さんが扉を開く。「あぁ、白鴎大の人たち?待ってたよ!」一気に緊張がほぐれる。「カウンターでいいかなぁ?どうぞどうぞ座って。何でも質問してくれていいよ!」
商品開発も観光強化も

こんな気さくさが愛されて、店には足利の企業人たちがよく飲みに来る。最近も新井さんの市立坂西中学時代の部活の顧問の退職を祝う会など、地元の友人も頻繁に訪れる。さらに準優勝の噂を聞き、県外からの来店者も。取材時に居合わせた東京と埼玉在住の男性2人連れは、「マスターとお話しして沢山お酒の知識を得られることも、猫又屋の魅力」と口を揃えた。
足利は車社会で、ドライバーが多い。だからこの店では、ノンアルコールカクテル「モクテル」にも力を入れている。酒が苦手な記者がいると聞いて出してくれたのは、「オリエンタルレディ」という自慢のモクテルだ。甘いだけのノンアルなら、ジュースでもいいじゃん…と思いきや、甘みの中に程よい苦み! とても飲みやすく、親しみが湧いた。
新井さんは、バーに立つだけでなく、他所の商品の監修も行っている。その数、リキュールやシロップなど現在16種類。好きな鑁阿寺を散歩しながら、新しいカクテルを思いついたりすると言う。
自店にとどまらず、足利の夜の飲食店やバーを盛り上げたくて、日帰りではなく一泊してもらえる仕掛けなど観光にも目を向ける新井さん。昔通った修行の地である横浜でも、大会が開かれる東京でもなく、地元足利に根を張って「商品開発やプロデュースに力を入れていきたい」と意気込んでいる。

取材=泉浦光・大橋爽乃・岡結菜・橋本慎之介
[白鴎大学地域メディア実践ゼミ]