劇場通り
”映像のまちづくり”で聖地に

今から101年前、足利市誕生と同じ大正10年。市内のある小さな通り沿いに、「有楽館」という映画館が開業した。その後、「東映プラザ」と改名して80年間も上映を続けたが、平成13年の閉館以降、通りは寂れていった。
そこが近年、今度は映画のロケ地として復活に挑んでいる。再興のシンボルは、通りの入口に宣された「劇場通り」と書かれたアーケード。実は、そこにはかつて「足利東映」の4文字が大書され閉館後も放置されていたのだが、およそ4年前のヒット映画『今夜、ロマンス劇場で』のロケのために「劇場通り」と書き換えられ、ファン達の聖地となっていった。
昭和40〜50年頃まで、足利東映は街の中心的存在だったと、地元の人は振り返る。この通りは、映画館のほか飲み屋街でもあったため、賑わった。中でも、人気映画の上映時と「東映まんが祭り」が実施される春休み・夏休みは、アーケードの外まで親子連れが渦を巻いて列をなす大盛況!人の圧で、沿道の店のショーウィンドーが割れることもあったという。普段から近所の子供たちの入場は顔パスで、映画館が遊び場だった。
どうなる? 『ロマンス劇場』

そんな熱気を昔話に終わらせず、再び「映像で市を活気づける!」という市長の熱い号令で“映像のまちづくり”が始動したのは、平成26年のこと。以来、劇場通り一帯は数々の映像作品にロケ地として使われるようになった。市内での年間撮影日数が217日に達した令和元年には、機材レンタルや関係者の宿泊など映像に関する直接経済効果が2億1千万円に。“映像のまちづくり”による経済効果の総額は、コロナ前までで約7億円にも及んでいる。
起爆剤となった『今夜、ロマンス劇場で』が、東映プラザを一時的に復活させて上映された時には、東京からわざわざ観に来た「今日で80回目」の鑑賞というおじいさんもいたという。ファンにとっては、それほどの魅力なのだ。
しかし、そんな劇場通りは現在、区画整理事業に直面している。存続を願う声もある中、今度はどんな展開になるのだろう。(足利駅北口から徒歩13分)

取材=岩崎朱里・粂川美菜・牧野甘那
森谷祐依[白鴎大学メディアゼミ]