2019年8月号 特集

江戸末期の桐生・足利を歩いた男

 幕末初期の天保二(一八三一)年十月、田原藩士であった渡辺崋山は二十六日間にわたって桐生、足利、太田、大間々などを旅して、紀行文『毛武游記』と多数のスケッチを残した。
 藩務に忙しかった崋山の旅は限られたものだったが、一旦旅に出ると武士の裃を脱いで一人の旅人、そして画家として人々と交流し、その土地の歴史、風俗、産業などを精力的に調査し記録に残した。これを読むと当時の桐生や足利の活き活きとした人々や町の様子が伝わってくるのだ。
(文/岡田幸夫・渡辺崋山と歩く会代表)