知的好奇心をくすぐるまちに
今、足利は大変なこと(?)になっている。足利市立美術館で開催中の「今、超克のとき。山姥切国広いざ、足利。」(弊誌3月号で告知)に、全国から刀剣ファンが殺到しているのだ。
展覧会初日の美術館には、朝6時に、1番乗りが並んだ。香川県からの女性だったそうだ。その後続々と並ぶようになり、10時の開館前にはロビーも前庭も人があふれた。その多くは20代、30代の女性である。
その熱気に驚いたのは、何といっても地元、特に美術館周辺の人(商店主)だったに違いない。すでに「堀川国広」を知った人にとっては、ごく当然のことだったかもしれないが、「なぜ国広人気?」と思っていた人たちにとっては、信じられない光景がそこにはあったと思う。「たかだか刀2~3本を見るために、どうして遠方から?」という足利人にずいぶんと会った。
初日の入館者は1200人を越えたという。2日目の日曜日もおそらくそれくらいだろう。普段は休館日となる月曜日も開館していたが、この日でさえ開館前に200人くらいの人が並んだそうだ。この状態が4月2日の最終日まで続いたら、いったい何人くらいの入館者になるのだろう。いずれにしても同美術館の記録を塗り替えるのは、必至のはずだ。
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足利には名所や名の知れたイベントがあって、集客数ではそれらにはとても及ばないが、美術館だけで見るなら、これまでの企画展をはるかにこえる。今回の企画には地元の商店街も大乗りで、店ごとに企画に因んだオリジナル商品を開発し、誘客に懸命だ。結果、たしかにまちなかに人が流れている。5月のゴールデンウィークや11月の足利秋まつりの人出とは違った「落ち着いた観光地、足利」という雰囲気で。
うん、このときの人通りを見ていて思ったことがある。それは「足利が将来目ざすべきまちのあり方かな」って。たとえば石畳通りを歩く彼女たちが、それぞれの店を覗いていく。興味のあるモノやコトを真剣に聞いている。みんな「知的好奇心」のかたまりのような人たちだ。
そう、足利は、このような「知的好奇心」旺盛な人たちに選んでもらえるようなまちにすべきだ。 今回の状況は、美術館の企画といってもイベントである。小生も「まちの活性化」をうたって「足利風土祭」を立ち上げたが、実際の効果はまだまだこれから、今はせいぜい「話題づくり」で精一杯。だから、今回のように目に見える効果が出るというのは、実に素晴らしい。「このまちの活性化」には、良質のイベントをやり続けることもひとつの手段かも知れないと思っていて、その点では今回の企画展は適ったものであろう。
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しかし考えなければならないのは、イベントで人を呼べるのは一時ということ。また、ブームがあればその逆もある。たとえが良くないかもしれないが、津波の怖いのは引き波のとき、と言うのがニュースで流れていた。陸地を襲った津波は、海に引き返すときに陸上のすべてを海に持ち去る。そのあとには何も残さない。つまりは、そういうことだろう。「まちの活性化」を真剣に考えるなら、「イベントに頼らない」「ブームには乗ってもいいけど信用しない」ことだと思う。
そして、「素通りされず」に「知的好奇心」をくすぐるようなまちをめざす。まずは我われが自覚せねば、だ。