チャンスに攻める

 「あしかがフラワーパーク」に隣接して設置されるJR両毛線の新駅事業の施工協定が正式に締結され、いよいよ8月から工事が始まる。開業は「栃木デスティネーションキャンペーン」がスタートする来年4月の予定だ。

 新駅は両毛線富田駅の西方約1㌔の地点、「あしかがフラワーパーク」の正面ゲートと西側ゲートの中間あたりになる。6両編成に対応した単式ホームで、通常は無人駅。藤やイルミネーションなどの繁忙期には有人で対応するという。

 駅本体の事業費は約8億1900万円で、このうち足利市が約3億9600万円、栃木県が1億円を負担し、残りの約3億2300万円がJRとなる。これに「Suica」対応のためのシステム改修費、券売機などの設置費用がかかってくるが、これは今後の協議になるという。

 ホームおよび乗降口は線路の南側に設置される。つまり駅を降りると目の前が「あしかがフラワーパーク」である。新駅の設置にあたり足利市は「同園周辺の渋滞緩和、足利市東部の開発、両毛線沿線の発展」と言っているが、1番は何といっても藤やイルミネーション時期の道路の渋滞緩和だろう。もっと言えば『あの車たちを、何とかしろよ!』という市民感情の緩和?ではないだろうか。当然だが市もJRも、鉄道利用による来訪を期待している。

 JRとしての新駅は、栃木県においては35年ぶりだそうで、7月上旬の記者会見では「新しく駅をつくる場合、その費用は全額を地元が負担するというのが原則なのだが、足利の観光の拠点、さらに地域の足としても今後の期待が大きいので、JRとしても相当の負担をすることになった」(JR東日本・百瀬孝高崎支社長)という。「今後は海外からの来訪者にもどんどん利用してもらえるようにしたい」「これからも足利市のまちづくりに、JRとしても連携して取り組んでいきたい」(同百瀬氏)とも述べていた。

 会見では市が実施した駅名の公募の結果が発表され、「あしかがフラワーパーク駅」が最多、「足利フラワーパーク駅」「藤の花駅」と続き、482件198案の応募があったことが報告された。これを受けて正式にはJRが最終決定をするという。

 全国的に見れば、テーマパーク名を冠した駅は私鉄に多いのだろうが、JRにもいくつかあって、「ハウステンボス駅」や「ユニバーサルシティ駅」が知られたところ。ディズニーランド隣接の「舞浜駅」も、当初は「ディズニーランド駅」の予定だったそうだ。「あしかがフラワーパーク」に似た施設では、北海道・富良野の「ファーム富田」近くに「ラベンダー畑駅」がある。トップシーズンに限った臨時駅だが、小生は以前からこの形の臨時駅があれば面白いと思っていた。

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 さて新駅だが、大いに期待したい。6月号のこのコーナーでも言ったのだが、小生は繁忙期の渋滞はなくならないと思っている。「多少の緩和」くらいに考えていれば間違いないのではないだろうか。もちろん渋滞緩和や市東部の開発に期待はしたいが、それよりも肝心なことは市中心部の活性であり、このたびの新駅設置はそのチャンスだと考える。これをどうやって掴むか…足利の市民、行政、経済人の知恵の出し合いを見てみたい。 今回の新駅設置にあたり、市民からのさまざまな意見が聞こえてくる。市が負担する設置費は市民の負担でもあるのだから、反対意見もあるだろう。が、繰り返すが、小生はまちの活性のチャンスだと思っている。これを生かさなければ、と思う。いずれにしても「あしかがフラワーパーク」は、極めて重い責任を背負ったことになる。

 そして、これは今後を考えての要望だが、新駅の構想には線路の北側から駅に直接入れる通路がない。そこで、現在「あしかがフラワーパーク」の東側にある線路下の通路のようなものを、ホームの端の方にでもつくってもらえないだろうか。市の東部開発を考えるならなおさらのことと思うのだが…。

2017年8月号たんたん