経済効果を上げる文化イベント
近ごろでは考えられないような足利のまちなかの賑わいが静まる直前、疾風が足利市を駆け抜けた。今年初めて開催された自転車のロードレース「ツール・ド・とちぎ」の81人の選手たちだ。 まちなかの賑わいというのは、3月4日から4月2日まで足利市立美術館で開催された「今、超克のとき。山姥切国広、いざ、足利。」を参観に訪れた人たちが、足利のまちなかに流れた様子である。その最終日の3日前に「ツール・ド・とちぎ」の1日目のレースが行われ、足利がゴールとなった。
実は、自転車にはめったに乗らないし、レースを見るのも特に興味があったわけではなく、何となく「写真だけは押さえておこう」くらいのつもりでゴール地点でカメラを構えたのだが、レンズの2~3m前を選手がトップスピードで走りすぎるのを目の当たりにすると、身震いするほどの衝撃を受けた。
「ツール・ド・とちぎ」は3日間をかけて、栃木県内を自転車で走るレース。1日目は日光をスタートし足利がゴールというコース(110㎞)で、一般道路を完全封鎖したラインレース(スタートとゴールが違う)はわが国では初めてだそうだ。
ゴール地点では到着予定時間の3時間前くらいから観客が集まり出し、地場産品やソウルフードなどの売店が賑わう。トラックに積まれた大型スクリーンでは、このレースの模様をスタートから追いかける画像が、解説付きで放映されている。もう1台のステージトラックでは、なにやらトークが。
ゴールは足利市民会館北側の足利市総合運動場の入り口。この直線約200mの最後の競り合いは確かに見応えがあった。この間の両脇の道路にはフェンスが並べられ、いつの間に集まったのだろうというほどの観衆が声援を送る。平日というのに、この人出、聞いてみると、市外からという人も結構多い。そして何より小生が驚いたのは、その仕掛けの大きさだった。多少でもイベントを企画、運営した人ならわかると思うが、これはホントに大変だっただろう。
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それほど大掛かりなレースであったが、ゴールとなった足利でのイベントはホンの一瞬。前述のように、会場での物販、大型スクリーンでの放映、そしてレース後の表彰式くらいなものだろうか。レースが終われば選手たちはチームごとに車の屋根に自転車を積み、選手は大型バスに乗り込んで明日のレースの出発地に移動してしまう。
というような状況だから、現状ではほとんどの市民に理解されないかもしれない。実際に「えっ、そんなレースがあったの?」と言われることが多い。「それで、足利にはどんなメリットがあるの?」とも。そういえば、冒頭の「今、超克のとき。山姥切国広、いざ、足利。」も、そのブームを知らない人は、実際にあれほどの人が並ぶのをみて初めて「刀、2~3本でしょ、どうしてこんなに?」と首を傾げていたのだ。
さて自転車といえば宇都宮。新聞記事によると、昨年10月に開催された「ジャパンカップサイクルロードレース」は3日間で観客数は延べ13万5000人。経済波及効果は28億4500万円だったそうだ。宇都宮市長自ら「地域経済にもたらす効果に驚いている」という記事になっていた。大きなイベントは経費もかさむが、企画次第でそれ以上の効果を得られるということ。
だが、最小の経費で最大の効果を生む企画もある。今回の刀剣展がそうかもしれない。期間中の美術館の入館者は約3万8000人、4億円前後の経済効果があったとこちらも新聞記事になっていた。
この2つの企画の特徴は、市外からの来訪者の多さだったと思う。期間中の賑わいは名産品店、飲食店、宿泊施設、交通機関にまで及ぶという。とはいえ、このような企画はそう簡単にはつくれない。が、いつかきっと機会はやってくると思う。それをとらえるには、常々「汗をかき、知恵を出していること」が必要なのだろう。
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[第1回ツール・ド・とちぎ] 主催●特定非営利活動法人ツール・ド・とちぎの会 主管●ツール・ド・とちぎ実行委員会/栃木県、経済産業省、NPO法人ツール・ド・とちぎの会、(一社)栃木県経営者協会、(公社)栃木県経済同友会、(一社)栃木県商工会議所連合会、栃木県内各市町、その他各種団体・諸企業